初期流産は母体の原因ではなく、胎児(たいじ)の染色体異常(せんしょくたいいじょう)が原因だったとお医者さんから聞かされることがあります。実は流産の約80%が胎児の染色体異常が原因であることがわかっているんですね。
ここで出てきた、「染色体って何?染色体異常なんて聞いたことない。」と思われる方も多いと思います。染色体や染色体異常といわれても聞き慣れない言葉なので難しい印象があり、あまり馴染(なじ)みがないですよね。
そこで今回は染色体や染色体異常について詳しく解説しますので一緒にみていきましょう!
もくじ
そもそも染色体って何なの?
性格や体形など、子供の見た目は親に似てくるのですが、これは遺伝によるもので遺伝子という物質によって伝わります。遺伝子はDNA(デオキシリボ核酸)の一部で、このDNAは細胞の核の中に染色体があり体の設計図のような役割になります。そして染色体をつくっているのがDNAです。
ヒトの遺伝子には23組46本の染色体があり、大きさの順に1~23番までの番号が付けられています。1~22番までの染色体を『常染色体(じょうせんしょくたい)』と呼び、23番目の染色体を『性染色体』と呼びます。
性染色体とは、性別に関係する染色体で、X染色体とY染色体が1本ずつ(XY)の場合は男性。X染色体が2本(XX)の場合は女性になるんですね。そして染色体は必ず2本1組になっています。


染色体異常とは?
本来2本1組で構成されている染色体が何らかの理由で、1本しかない、または3本になっているなど、数的に異常がある場合『染色体異常』と呼びます。
染色体異常の名称と症状
それぞれの名称と症状をみていきましょう。
- ダイソミー
染色体が2本1組の正常な場合の名称
- モノソミー
染色体が1本少ない場合の名称。流産ではX染色体を失ったモノソミーがよく見られます。
- トリソミー
染色体が1本余分に存在し3本になる名称。新生児で最も多くみられるのがトリソミーです。
- テトラソミー
染色体が4本になる名称。
- ペンタソミー
染色体が5本になる名称。
特に染色体異常が発見された時、モノソミーやトリソミーのケースが多くなるので知っておくといいですよ。


染色体異常による障害の種類とは?
染色体異常は、何番目の染色体にどのような異常が発生するかによって障害の種類も変わってきます。
ダウン症候群(しょうこうぐん)
名前を知っている方も多いかもしれませんね。ダウン症候群は21番目の染色体トリソミーによって起きる先天性疾患群(せんてんせいしっかんぐん)で、新生児に最も多い遺伝子疾患です。
ダウン症候群の子供の多くが心臓と消化器官の病気を合併し、知的発達には個人差があり、ゆっくり発達していきます。
エドワーズ症候群
エドワーズ症候群は18番目の染色体トリソミーになることで発生します。心疾患をはじめさまざまな疾患が起こるため、流産してしまうことがほとんどです。また生まれてきてもすぐに亡くなってしまうか、1年以内に亡くなってしまうことが多くなります。
パトー症候群
パトー症候群は13番目の染色体トリソミーになることで発生します。頭や眼が小さいなど外見上の特徴や、心臓や呼吸器官に関する疾患などさまざま症状がみられます。


染色体異常は高齢でリスクが高まる?
高齢になるにつれて身体が老化するのと一緒で、卵子も老化し質が低下してしまいます。老化した細胞には染色体異常が多くみられ、40歳では約40%の方が流産するとも言われており、その一番の原因が染色体異常によるものです。


出生前診断のすすめ
出生前診断とは、生まれる前に赤ちゃんの病気や奇形(きけい)の有無を診断することができ、主に2種類の検査方法があります。
- 絨毛(じゅうもう)検査
絨毛検査とは妊娠早期の胎盤(たいばん)の一部で、それを採取して胎児の染色体異常や遺伝子疾患を検査します。
- 羊水(ようすい)検査
羊水検査とは長い注射針で羊水を吸引することによって得られた羊水中の物質や胎児細胞をもとに染色体異常の有無を調べることができます。
注意点としては、お腹に針を刺して羊水や絨毛を取るので、流産や死産のリスクが少なからずあります。確率は少ないとはいえ、お医者さんとよく相談してから検査をしてくださいね。


流産の確率は?年齢ごとに上がるってホント?不育症についても解説では、年齢ごとの流産の確率や高齢出産のリスクについて詳しく書かれていますので、ぜひ読んでみてくださいね。
まとめ
・染色体とは23組46本で構成されている。
・染色体異常とは本来2本1組の構成が何らかの原因で変化してしまうこと。
・染色体異常による障害の種類は、ダウン症候群、エドワーズ症候群、パトー症候群などがある。
・染色体異常は、高齢になるにつれリスクが高まる。
・染色体異常は出生前診断で発見することができる。
流産は誰にでも起こりうることであり、特に染色体異常が原因の流産は防ぐことが難しいといわれています。流産を一度経験すると、自分自身を責めてしまい落ち込んでしまうこともあると思いますが、決して自分の行いが悪かったわけではありません。
気持ちを切り替えて、新たなマタニティライフを過ごせることを心から願っております!